自転車レースの最高峰ともいわれる、「ツール・ド・フランス」で前人未到の7連覇を成し遂げた、ランス・アームストロングの半生記。
この本は、勝ち続けたことの栄光を讃美するものではなく、むしろその前に病んでいたガンとの闘いについて、等身大の表現で語っているものです。
自転車競技の選手として上り坂にあった時期に睾丸ガンを発見し、気がついた時には肺と脳にまで転移、生存率は20%といわれる確率の中で自身と向き合い、病気と闘い、地道な治療を続けなんとか回復したものの、所属するチームからは解雇を通告、新しい活躍の場を探してそこからツールに出場し、勝ち続けた選手です。
もうね、かっこいいとか連覇すごいね、なんていうありきたりな気持ちは読んでいて全然あてはまりません。
病気を発見した時からの心の移り変わりを描いた闘病記であり、受けた治療の内容や文面ににじみ出てくる心の中の葛藤が、読んでいて強烈なインパクトを残します。
しかも、自分と同世代ということで、決して年老いてからの人ごとのようには感じられず、「その時、自分だったら...」と思うととても同じことは出来なかったのじゃないかと、改めて自分の弱さを思い知らされた気がします。
2004年、当時ぼくはマイクロソフトという会社にいて、6月に国内で担当していたお客様御一行のアテンドを兼ねた新人研修を受けるため、レドモンド本社(シアトル)にいました。
その頃ちょうど、アメリカのNike Shopで「LIVE STRONG」という、ランスが発起人となって企画したガン撲滅のための基金活動として、腕に付ける黄色いゴムのリングが売り出されており(サイズによって価格が異なりますが、だいたい1個1ドル前後)、松坂大輔選手(当時、西武ライオンズ、現・ボストン レッドソックス)をはじめとする日本のNike のエンドーサーがみなこぞってこのリングを付けていたことからその存在を知り、出張に行った折に募金も兼ねて買って来て以来、左腕にはリングを付けています。
最初は、Nikeのエンドーサーに憧れて買ってきたのですが、自分が精神的に辛いことがあった時などは、リングに刻まれた「LIVE STRONG」の文字を見て何度も励まされましたし、この本を読んでからは、リングに込められた発起人の思いとともに、それが出来るに至った様々な出来事や葛藤を今までよりも身近に感じられるようになりました。
こういう人生もあるんだと思ったら、自分が日常に抱えることで弱気になんかなれないな、と思ってしまう本です。ぜひ、ご一読を。
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